まずは初めまして。
アムステルダムオフィスでアシスタントプロジェクトマネージャを担当している杵渕(きねぶち)です。
今年の日本のお正月はだいぶ暖かかったらしく、筆者からすると「冬っぽくなくても寒いよりはマシ!」と思ってしまいました。というのは、筆者の住む北欧の小国エストニアでは、気温が-20度を下回る日も珍しくありません。今日はそんな「冬」をテーマにしたちょっとシリアスな話を。
2024年1月にphys.orgで紹介された、1980年代以来、雪がどんどん少なくなってきているという研究結果についてです。
科学者たちが何十年もの雪のデータを分析して、昔と今の雪の量の差を浮き彫りにしてくれました。データ化された結果が物語るのは、現在の地球温暖化の進行状況はかなり深刻だということです。雪の分析データを見ると、地球温暖化が抽象的な話ではなく、実際に目の前で起きている出来事だということを感じさせてくれます。
雪が減少することには、あまり悪影響がないのではないかと思う方々もいると思いますが、雪の減少は水資源や生態系にダイレクトに影響しています。雪解け水が不足すると、農業や都市の水供給、生態系の健康にまで悪影響を及ぼしてしまうからです。それに加えて、冬の観光も影響を受けることが懸念されています。今ですら、積雪量の少なさで苦労しているスキーリゾートは、これから先ますます大変な状況になる可能性が高まっています。
冒頭で筆者は現在エストニアに住んでいると述べましたが、過去には8年間ほどエストニアのさらに北に位置するフィンランドにも住んでいました。フィンランドでは、地球温暖化がもたらす影響は雪の減少以外にも顕著に見られます。冬に形成される氷結湖の氷の厚さが以前よりも薄くなっていたり、冬が短くなることによって植物の成長サイクルが変化するなどの報告が年々増えています。
近年、世界中では夏の異常な暑さや猛暑に伴う干ばつから起こる大火災が注視されます。ただ、地球温暖化の進行は夏だけでなく、雪の量が減っている冬からも感じてくる程になりました。パリ協定の目標達成も怪しくなってきている今、直ちに気候変動問題の解決に取り組む必要があると感じます。
未来だけでなく、今この瞬間に地球温暖化がさらに深刻化しているという事実に直面すると、私たち個人にできることは一体何なのか?と頭を抱えてしまいます。しかし持続可能な実践的行動、再生可能エネルギーの導入、そして国際協力などできることはたくさんあります。多面的なアプローチをみんなで行動に移していくことが大事なってきます。
エストニアで地球温暖化の影響を軽減するために実施されている具体的な取り組みの一つを紹介させていただきます。エストニアの首都タリンでは、公共交通機関を市民が無償で利用できる策を施しています。そうすることで公共交通機関の改善と普及を図り、市民に対して持続可能な移動手段の利用を奨励しているわけです。これにより、個人の自家用車利用を減少させ、交通に伴う排出量を抑制する効果が期待されます。
1980年代以来の雪の減少は、気候変動を通じた目に見える地球からの赤信号の一つです。科学が示すデータの向こうには、今すぐ行動を起こす必要があるというメッセージが込められていると感じました。季節や場所に関係なく、日常の自然現象から感じる「温暖化の兆候」はますます顕著になっています。温暖化対策は急務であり、全ての人が積極的に参加すべきですが、我々は日常の自然や環境からのメッセージにもっと耳を傾ける必要があります。そうすることで、個人レベルでも温暖化対策を始めるきっかけが得られるでしょう。
研究結果が紹介されている記事はこちらからご覧になれます。(英文):
地球温暖化
持続可能